金沢、富山の歌旅 2


翌日。

皆より少し早めに起きる。

迂闊にも下着姿で洗面所に向かっていたら

ヨシヒロさんのお母様と

広い廊下でばったり出くわす。

昨夜は遅い時間に帰宅したので

まだ挨拶もしておらず

しかもこんな恰好で初対面となり

僕は廊下に額をこすりつけ、

ひれ伏してお詫びし

名前を名乗った。


ヨシヒロさんのお母様からは

バリバリの富山弁を

終始笑顔で返していただいた。






家の玄関の下駄箱の上、

おそらくはお母様の趣味を箱庭のようにして

飾られてるのだろうと推測する。

拾ってきた、松ぼっくりやどんぐり。

自分で折ったと思われる小さな折り鶴。

可愛らしく並べていて

思わずシャッターを押した。

チャーミングなお母様。




この日、皆とは別行動。

昨夜二十数年ぶりに再会した友人と過ごす為に

もう一度、金沢へ向かう。


可愛らしい木造駅舎。

ヨシヒロさん宅の最寄り駅「福野」。



美しい跨線橋



汽車の中では

お年寄りや学生の富山弁が

スウィングしている。


車体の揺れと

言葉が一緒に揺らめいてて

それはまるで、音楽。


地方のローカル線の日常を垣間見るのは

とても贅沢な気分だ。


ターミナル駅、高岡。

気持ちのいい、空。



高岡の改札横で見かけた

こちらも音楽。



大阪行きの「雷鳥」で金沢へ。

今では「サンダーバード」なんて名前になってる。。

僕の少年時代の憧れの特急だった「雷鳥」。




その友人は中学時代の幼馴染。

彼女は、僕と同じ転勤族で

僕らは札幌で出逢った。

人生の大波小波に揺られ揺られ

今は故郷の金沢に住んでいる。

この北陸ツアーが決まる

ほんの数ヶ月前に連絡をくれて

いつか金沢に歌いに行くよ、と約束していた矢先に

ローリンから声がかかった。

こういうのを 縁 と呼ばずして

何と呼ぼうか。



二十数年ぶりとは言え

あの頃の 感覚 を取り戻すのに

ほとんど時間はかからなかった。



僕は 地元 という場所がないから

こうして昔の僕を知る人そのものが

僕の故郷かもしれないと

最近強く感じている。



僕の帰る場所は、思い出。

地元がある人にとっても

あるいはそういうことなのかもしれない。




彼女の車で

金沢をドライブ。


僕の知らない

車窓の街の風景に

心は揺れた。


車の中で

お互いの近況を

少しずつ少しずつ

混ぜて溶かしていく。


歳を重ねるって

こういうことなのかもなぁ

とか感じながら。


彼女の運転に

身を委ねて

時々、彼女の横顔を眺めながら。








夕方、

今日のライブ会場、カフェポローニャへ。


僕が着いて間もなく

降り始めた雨。

しかも豪雨。。

僕がリハーサルを始めたら

雷鳴が轟き始めた。

夕暮れ時に稲光。

メルヘンでしょ。

雨男マジック。笑




この日の、出演者のスナップ。


主催のろくたんさんが

初めに2曲だけ演奏。

とても男らしい、やさしい歌と

繊細なインストルメンタル

ろくたんさんのこと

ほとんど何も知らないけれど

ほとんど知ってるような気もする。笑

うん、うん、と頷きながら聞かせてもらう。


ろくたんさん、この日は

機材の設営から

PAの操作、

搬入搬出、

そして出演まで

すべてをこなしていた。

本当にありがとうございました。




一癖も二癖もある

おじさんまみれの出演者の中で

この日唯一の花、志帆ちゃん。

強く、素直で、まっすぐな

ロックを感じさせる世界。

とても気に入った。


ライブのMCの中で

赤裸々に自分を語る姿に

思わず、ぎゅっと抱きしめたくなる。

抱きしめなかったけど。笑



ヨシヒロさんは

いつものセットリストの後、

最後に、友部正人さんの「遠来」をやった。

徐々に高ぶるような旋律の曲だが

決して高ぶらないヨシヒロボーカル。

だから余計に僕の中で、

言葉が高ぶる。

そして、

真ん中に、届いた。



ジョー長岡 のセットリスト。

1 キャラメル

2 波止場

3 夜釣り

4 夏服

5 旅人たち(小沢健二

6 素晴らしき日曜日(ピアノバージョン)with 阪本正義(ブルースハープ



本番直前に、

久しぶりに「夏服」をやろうと決意。

真っ白な可愛らしいシャツドレスワンピ姿の

この日バースデイの夏子さんに

心をこめて、捧げた。




この日のトリ、ローリン。

僕はピアノで「あいつ」「夕焼け」「地平線」「道しるべ」「稲妻」、

アンコールで「ブラザー軒」を一緒に。

ローリンが歌う頃には

雨も上がって

綺麗なブルームーン

こうやっていつまでも

ローリンの横でピアノを弾いてたいなぁと

しみじみ思いながら。





終演後、打ち上げは

ヨシヒロさんちの近くの「someday」という店に行こうと

皆で車に分かれて乗る。

打ち上げに行きたい!と言ってくれた志帆ちゃんの車助手席に

僕がなだれ込み 笑

しばらく二人で、夜道のドライブ。

車中で、歌のことの様々な悩みを

初対面の僕に、打ち明けてくれたのだった。

僕は、うんうんと聞きながら

あ、デジャブ、みたいな

不思議な気持ちに。


悩みながらも、彼女の中には

どうしたいのか具体的なビジョンがあって

僕は、もうそのことだけで大丈夫だよって、言った。

願い続ければ、夢は叶う。

成りたい自分には、必ず成れる。

若い志帆ちゃんも、

いい歳のおじさんの僕も、全くの一緒。




辿り着いたsomedayは

内装も、BGMも、メニュも

まるで「ツインピークス」に紛れ込んだようなロックカフェバーで

そのうち、丸太おばさんや

フランケンシュタインみたいな大男や

背広姿で踊る小人や

ブロンズの美人姉妹とか

店に入ってくるんじゃないかと

びくびくわくわくするような感覚。

バーボンを2杯くらい呑んで

僕はその場で、夢の中へ。



店を出るときに起こされ

帰り道に

ささやかだけど

夏子さんにプレゼントを渡す。

僕がいっとう気に入った、イカリのピアス。




今日の最後は

ジョー長岡の「夏服」を、あなたに。

高岡ポローニャのライブより。




今日はここまで。

続きは 3 で。



ジョ