黒い瞳

金沢、富山の歌旅から帰って

ぼんやりと過ごしていたが

少しずつ少しずつ

東京の時間の中に

溶けていった。


仕事も忙しく

それでも檸檬葉とのライブはどんどん近付き

三人で、

これでもかってくらいアイデアを持ち寄って

打ち合わせして

酒も酌み交わして

いよいよ明日を迎える。


主催のフミちゃんが、長い文章にしてくれている。

よかったら読んでやってください。

3 まであります。笑


http://green.ap.teacup.com/2323lemon/153.html





昨夜、

遅い時間に仕事を終えて

いつものように自転車で帰宅途中。


大きな通り沿いに

自動車の販売店があり

もちろん店は閉店時間を過ぎていて

店内は真っ暗。

ガラス張りの大きな窓の向こうの暗がりに

子供の遊び場のような場所が見えた。

ほら、大人が車を物色してる間に

子供たちが退屈しないように

そういう場所ってあるでしょ。

ふかふかの絨毯に

滑り台とか

大きな積み木とかある場所。


その遊び場を囲むように

大きなソファがあって

そのソファには、

これまた大きな

円らな瞳の犬が横たわっていた。


暗闇の中、

悠然と

横たわっていた。


その犬は

虚空をじっと見つめていた。

黒い大きな瞳に

僕は吸い込まれそうになった。


ちょうど交差点で信号待ちをしていたので

僕はその犬に向かって

小さく手を振ってみた。


犬は僕に気づかずに

じっと虚空を見つめたまま。


次第に僕は、

どうしてもその犬とコンタクトがとりたくて

大きく手を振り

更にガラス窓をコツコツ叩いたりした。

犬はまだ、虚空を見つめていた。


何をそんなに思案しているんだろう

気になった。

気になって黒い瞳の奥を覗き込んだ。


信号はとっくに青になってたが

僕はその犬に手を振り続けた。



やがて。


その犬が

生き物ではなく

ぬいぐるみであることに

僕が気づいたその瞬間、

僕の頭の中で

パンっと、音がした。

映画監督がシーンを撮った後で

「カット!」っていうような感じで

音がした。




僕は東京の空の下で

ひとりぼっちだった。

涙が出そうになった。



その店には

防犯カメラがあるから

もしかすると

昨夜のビデオには

店内の犬のぬいぐるみに向かって

根気よく手を振るおじさんが

最後は窓ガラスを叩くおじさんが

映っているかもしれない。



笑わないでおくれ。

僕は真剣だったよ。




北陸ツアーの日記、

そのうち書きます。









ジョ