絵空事

PCで

被災地のラヂオを聞いていたら

こんな話をしていた。



ある老人が

浅い眠りを経て

朝方早くに目を覚ました。

先週、自分の街に起きた事が、

実は夢だったんじゃないかと

一瞬頭をよぎったが

完全に目を覚ますと、

そこは避難所の体育館だったと。

そういう朝が、

もう何日も続いている、と。



東京に住む僕にとっても

3月11日以来、

日常と非日常の境目が

ぐらぐらに揺らいでいて

未だ焦点が合わずにいる。



仕事をしてても

自転車に乗ってても

テレビを見てても

ギターを弾いてても

ご飯を食べてても

風呂に入っても

布団に入って電気を消しても

しっくりと

ゆったりと

気持ちが定まるところがない。



まあまは

地震以来、とても甘えん坊になった。

僕と居る時間は

僕の傍から

片時も離れようとしない。

僕は、まあまに向かって

「大丈夫だよ」と声をかけるが

まあまにしてみれば

大丈夫とは正反対の何かを

全身で受け取っているに違いない。



僕が高校生の頃、

岡崎京子の「pink」という漫画が流行った。

「飽食の時代」「終わりなき日常」なんて言葉がもてはやされ、

その恋愛物語のラストシーンは

誤解を恐れずに言えば

僕らの望む 結末 だった。



現実と絵空事

いつだって反転する。



現実は

ちっぽけな僕らの前に

立ちはだかる。

無力な僕らは

なす術がない。


そのたびに

僕らは

絵空事にすがる。


人の生き死にや

幸せや不幸や

恋愛や孤独や

些細なこと、

ありとあらゆること、

大きな時間の流れにまで

名前をつけ

意味をつけ

色をつけ

物語にして

絵空事をこさえる。



僕は

楽家だ。


僕は今

どんな歌を歌えるのだろう。


僕は今

どんな絵空事をこさえることができるのだろう。


僕は。


僕は。





本当は

兵庫は西宮から

徳田建さんという

ダンディーな歌い手と

「三人唄会」の予定だったのですが

徳田さんが都合で上京できず

阪本さんと二人で、

歌い綴ります。


もし都合合えば、

池尻大橋まで

ぜひとも足を運んでください。


こんなときですが

皆さんと同じ時間を過ごせることを

とても心待ちにしている自分がいます。


あの人にもこの人にも

まだ会ったことがない人達にも

会いたいです。


会って

話をして

乾杯して

もし嫌じゃなかったら

ハグしたい。

絵空事の中の世界みたく。


どうぞよろしく。