僕は手袋 〜ソノリウムラヂオを振り返る〜

昨日の夕暮れラヂオで

ジョー長岡の2012年、全てのライブが終わった。



12月は3つのラヂオを製作。

どれもそれぞれに

出演者やお客様や演奏会の場所によって

様々な表情を見せてくれた。



これほど強い、

音楽の余韻の中で

年の瀬を迎えるのは

初めてかもしれない。



新しく挑戦したからこそ

また、継続しているからこその

次の可能性や、

新しい欲が生まれた。

はっきりとね。



恰好つけて言えば

常に深い覚悟を試される最前線にいて

決断から逃げることなく

迷いの中でも

最善の答えを探し続けた、

そのご褒美なんだと、

自分では思っている。


来年のいくつかの予定は

既に動き始めている。


ほっと一息、

というわけにもいかなく

抜け殻には

まだなれないみたいだ。


汗かいて

必死に考えて

アクセル全開で

やっていくしかない。


自分で考えている以上に

欲が深いんだな。笑






今夜は

12月16日に開催された

ソノリウムラヂオの話を。




今年春から

少しずつ少しずつ

パズルのパーツを組み合わせていくように

丁寧に丁寧に

その形を作っていった。


紆余曲折を経て

当日は、あっけらかんとやってくる。



夏の終わりに

「湯銭浪漫」を共に製作した

檸檬葉の二人に

大事なスタッフの役をお願いする。


ソノリウムに入る前

彼らとミーティング。

僕は約束の時間に遅刻。

そして忘れ物。


企画者の間抜けな素顔を

一番知ってるのは

間違いなくフミと田中だ。


今回彼らは

そんな僕をサポートし

完璧にその任を全うしてくれた。

感謝してもしても、しきれない。

心強かった!




檸檬葉 フミ タナカ)




この日、PA

ラ・カーニャでお世話になってる

加納さんに、僕からお願いをした。

すると加納さんは、

寺尾さん主催のビッグイシューのイベントでのPA

寺尾さんのクアトロのワンマンライブのPAをやっていたりと

彼女の主要なライブの音作りを手掛けている人だと

後で判る。



こういうのは、縁という以外に

どんなふうに説明すればいいのだろう。



ソノリウムに入って

まずはPAの設置。

加納さんは、てきぱきと指示を出し

手際よく作業を進めていく。


重機を丁寧に運ぶくらいしかできない僕に

加納さんから指示が飛ぶ。


「ジョー、モニタースピーカーに角度をつける

黒っぽい箱のようなものを探せ」


モニタースピーカーを見れば、

ガムテと養生テープが

むき出しに下部に挟まっているだけで

やはり見栄えがよくない。


今回は

天井が高く

白壁の美しいソノリウムに

スタインウェイのコンサート仕様のグランドピアノ。

そこに、寺尾紗穂

シンプルで美しいステージなのだ。



それらを囲むモニターの下が

むき出しのガムテープでは

恰好がつかないというもの。


僕はソノリウムのスタッフに

黒いビニールテープを用意してもらい

本番前に、ガムテに黒いテープを巻いて

せめて黒い物体にするやり方で、

乗り切ろうと考えた。



寺尾さんがソノリウムに入る。



加納さんと一言二言やりとりし

ピアノに向かう。

ポロンポロンと美しい音が

ソノリウムに鳴り響く。

天井から降ってくるような

音の粒。

そして寺尾さんの声。



僕の中で

ラヂオが鳴り始めた瞬間。




リハーサルを終えて

開場直前になって

例のガムテに黒テープを巻く作業をしようと思ったら

さっきまであった黒テープが見当たらない。

ソノリウムのスタッフもいない。


僕は咄嗟に

今日自分がしていた、

毛糸の手袋で覆うことを閃き

試してみた。

すると、なかなかいい。


加納さんも

「ええやないか〜」

と言ってくれて

「どうせなら指先をこっちに向けようや〜」

となって、ご覧のとおり。




きっと最前列のお客様は

気づいたかもしれない。

寺尾さん本人は、

気づかなかったろうな。





この日の僕の姿が

見事に露わになった瞬間。

そう、僕はこの日

手袋だったんです、

黒くて目立たない。笑

歌い手が少しでも歌いやすいように

モニターをほんの少し持ち上げてた

黒い手袋。







本番前に

寺尾さんの控室で最終の打ち合わせ。



寺尾さんから

「何かリクエストありますか」

と聞かれ、恐縮しながら

「骨壺を」と答えた。






本番の話、沢山はよそう。


加納さんは、

気持ちのいいリバーブサウンドを作ってくれて

歌もピアノも、きっとここでしか味わうことのできない

響きだった。


寺尾さんは曲の間に

自分の歌や音楽のルーツの話を

沢山してくれて

それにまつわる曲も披露してくれた。

普段のライブでは、なかなか聞けない曲。

そしてお話。

とてもラジオ的な時間だった。



そして約束通り、

「骨壺」を歌ってくれた。

僕は親父のことを思って

ひとしきり泣いた。

我慢しようとしたが

駄目だった。






アンコールの前に

夏子さんが

寺尾さんをイメージして

自分で作ってくれた素敵なブーケを

直接本人に手渡す。

(写真がなくてごめんなさい)



夏子さんの気持ちを思って、

涙が流れる。


白いブーケは

寺尾さんと

ステージの風景に

ぴったりとハマった。

さすが、夏子さん。







アンコールの1曲目、

ちょうど21時を回った頃だ。

その日は衆議院選挙と都知事選挙の投票日。

テレビではその時間から

開票速報が流れていたはず。

ちょっと予想していなかった

悲しい結果が、判明し始めた時間だ。



その瞬間を見計らってなのか、

または無意識なのか、

井上陽水の「傘がない」を選曲した寺尾紗穂

ブルーベックみたいなヒップなピアノで

ぐいぐい歌っていく。

怒りをも連想させる、強烈なグルーヴ。


最後は「お天気雨」で

この日一番の拍手に包まれた寺尾紗穂






JJazz.Netにて年明けに、

ライブの模様の一部を

O.A.する予定です。

「Jazz Today」という番組。


http://www.jjazz.net/


僕がナビゲーターをやってます。


同時に JJazz.Net Blog にて

寺尾さんへインタビューします。


ライブのことを振り返りながら

シンガーソングライター寺尾紗穂

少しでも迫ってみたい。

どうか楽しみにお待ちください。






最後になりましたが

あの日永福町まで足を運んでいただいた

全ての皆様に

感謝をささげます。

素晴らしい雰囲気を作ってくださいました。

皆さんと共に作った時間でした。


本当にありがとうございました。




ジョー長岡




(デザイン 阪本正義)