癖から逃げる


高校生の頃、

試験の前、余裕がなくなると

必ず、本が読みたくなって

きまって貯金箱をひっくり返して

単行本を買いこみ

本の中に没入したもんだ。

もう逃げられない状況で

でも、逃げる。


そんな風に 逃げる 癖は

今でも消えない。


疲れた体と

眠れない頭と

消耗していく時間と

冴えない感覚と

単行本を抱えて

僕は汚い喫茶店に駆け込む。

すべてから 逃げる ように。


ただボーっとしているようで

その世界に浸かってるようで

じっと文字を見ながら

意味を追いながら

行間を感じながら

文字の形ひとつひとつが

奇妙な模様に感じるまで

決して香り高くない黒豆のしぼり汁を

口いっぱいに含んで。

ゆらゆら、ゆらゆら。



ライブでも

芝居でも

誰かの誕生日会でも

一人旅でも


自分が発起人となって

主体になって

ノートに殴り書きして

企画書おこして

お金をかき集めて

打ち明けて

秘密にして

人を巻き込んで


巻き込んだつもりが

いつのまにか

深い渦に巻き込まれて

僕はいつも溺れる。

誘惑の甘い水を

たっぷりと胃袋に流し込んでは

溺れる。


息が詰まるような、心地よさ。

そして、

逃げ場のない、苦しさ。



主体だったはずの自分が

客体だった存在に

いつのまにか

追いつかれ

追い越され

気がつけば

置いて行かれる。



誰かの歴史や

生きているスピードや

締め切りや

熱や

理由や

どろどろとした叫びや

孤独や

虚栄心や

性癖や


そんなものを知れば知るほど

ドラマを目の当たりにすればするほど

主体だったはずの僕は

心から感激して

次第に、

打ちのめされて

世界に置いて行かれる。

ひとり、

取り残される。



僕は

雨降りの夜中に

涙を流し

ギターを弾いたり

安いウイスキーを舐めたり

昔の女に手紙をしたためたり

嫌がる飼い猫を抱きしめたり

がりがり黒い豆を挽いたり。


何度も何度も

そんな夜を潜り抜けて

もがいて

潜り抜けて


明日はやってくる。




♪ 


  



雨があがって

陽だまりの中

時はころがりつづけ

僕はまた

ひとり乗り遅れ

国道に立っていた


光る風と

かげろうにもつれ

川の流れに沿って

あなただけが

この道のりを

わかってくれる



あの丘の上

ゆれて染まる

季節の変わり目みつけ

昨日の唄を ひとつ口ずさみ

国道に立っている



はるかな夢は

あの森を抜け

緑の風に溶けて

明日の唄が 南の街へ

連れてってくれる




一番電車を見送って

目覚めの紅茶を飲んで

シャツのそでをまくりあげ

オンボロ車に乗って




あした天気になあれ  加川良





10月8日は

沢山のお客様が

足を運んでくれる。


加川良と阪本正義が

同じステージで

歌の競演する。


ステージに

岩見夏子が花を生けて

まじがギターを添えてくれる。

(敬称略)



僕はまだ

何かできるんじゃないかって

思ってるんだよ。

なんて欲深いんだろう。


僕はまた

全てから逃げたいと

思ってるんだよ。

逃げられないの、

わかってるくせに。



今回も溺れそうなので

(もう何度も溺れたけど 笑)

起死回生のアイデアを出さねばと考えてたら

すごくいいのを思いついた。



今日のスタジオリハーサルの前に

決行するのです。

良さんと喫茶店デート。



お誘いしたら

いつも返信が遅めな良さんから

素早い、そして短い返信。


「了解(ピースマーク!)よろしく。」



今回は 逃げる んじゃなくて

最後の最後に

主役の一人に

飛び込んでみようと、

その結論に辿り着いた。



逃げる 癖から

逃げるのだ。

ど真ん中に、もう一度

飛び込むんだ。




なるべく、

ライブとは関係のない話をするぞ。

(難しいだろうけど)


くだらない話をするぞ。




ジョ